先祖代々の墓

お盆休みは社会人の夏のまとまった休みですね。

なので「お盆休みの間にしかお墓参りに行けない」という人も多いと思います。

一般的にお盆の期間は7月13日~16日あるいは8月13日~16日です。
(地域により違いがあります)

しかし、最近では個々で日にちをずらしてお盆休みをとることも増えているため、世間一般のお盆の期間と「自分のお盆休み」がずれてしまうことも珍しくありません。

そのため、お盆のお墓参りも多くの人が「自分の行ける時に」となってきています。

お墓参りは本来、いつ行ってもかまわないと言われていますので、お盆の時期にこだわらなくても大丈夫です。

ただ、日本に古くから続く慣習として「お盆のお墓参り」のことを心に留めておくのも良いのではないかな、と思います。

そこで、今日はお盆にお墓参りをする日やその意味、また、それにまつわるお盆中の行事についてお話したいと思います。




お盆のお墓参りの日

お盆のお墓参りでは、お墓参り自体に単独の意味合いがあるわけではなく、お盆の期間中に行う行事の一つ、という意味合いで捉えられています。

つまり、お盆のお墓参りはお盆の行事の中に含まれている、ということです。

ですので、その行事の流れから言えば、お盆のお墓参りは13日と16日の2回になります。
(ただこれは宗派や地域や家庭によってさまざまで、お盆の期間中には行かないという方もいますし、3回、4回行く方もいます。)

こういったお盆のお墓参りの意味を知るには、お盆自体のことを知る必要があります。

お盆のお墓参りの意味

お盆の意義を大雑把に言うと、「ご先祖様への感謝の心をもって、ご先祖様と供に過ごす行事」ということになります。

お盆の始まる13日を迎え盆(盆の入り)、お盆が終わる16日を送り盆(盆明け)と言いますが、この両日のお墓参りは、ご先祖様の送り迎えの行事なのです。




お盆の行事

お盆でのお墓参りは、お墓を通じてあの世にいるご先祖様をこの世に呼び、お盆が終わったらまたあの世へと帰すための一つの儀式とも言えます。

そのことがもう少し分かりやすいよう、ここで12日から準備をした場合のお盆の大まかな流れの例と詳細をご紹介しておきます。


【12日】
日中:お墓の掃除

夕方:精霊棚(盆棚)やお供え物などの準備

【13日】
日中:お墓参り(精霊迎え)
(ご先祖様をお迎えに行き、家まで一緒に帰ります。お墓で提灯を灯して、家まで消さずに持ち帰るという風習もあります。)

夕方:迎え火を焚いて玄関先に灯す

【14日、15日】

終日:ご先祖様とともに過ごす。
(お供えしているお水、食べ物などは適宜交換します。)
新盆(初盆)の場合は僧侶を呼んで法要。

【16日】
夕方:お墓参り(精霊送り)
(ご先祖様をお墓まで送りに行きます。)
送り火を焚いて玄関先に灯す

【17日】
午前:精霊棚などの後片付け

※(これはほんの一例で、「必ずこうする」ということではありません。
お盆の行事の流れや内容は、宗派や地域や家庭ごとに異なりますので、正しい方法というものはありません。)

お迎え火と送り火

迎え火は13日の迎え盆に、送り火は16日の送り盆に焚きます。

【迎え火】13日に玄関先で灯すご先祖様を迎え入れる明かり

松木や藁や苧殻(おがら:神事などに使う麻の皮をはいだ茎)を素焼きの焙烙(ほうろく:お皿)の上で燃やして玄関先で灯し、ご先祖様の帰る場所(家)の目印としています。


【送り火】16日に玄関先で灯すご先祖様を送り出す明かり
迎え火同様に灯しますが、こちらは遠くに帰っていくご先祖様を見送っている、という目印となります。

各地で行われる灯篭流しや精霊流し、京都の大文字焼きも送り火の風習の一つです。

また、河原にろうそくを並べる、お墓からの道すじに松明を灯す、という地域もあります。

精霊棚(盆棚)とお盆飾り

【精霊棚】御位牌や仏具、五供(ごく)、精霊馬などを供える祭壇

精霊棚は低めの平型(あるいはひな壇型)の台の上に真菰(まこも:イネ科の植物)の敷物を敷き、その四隅に笹竹を立てしめ縄で囲い、祭壇状に作ります。

平台型やひな壇型などがあります。

【盆提灯】絵柄の入ったお盆用の置き型の提灯(新盆(初盆)の場合は白のもの)

精霊棚の正面に、左右一対で設置します。

盆提灯はご先祖様の御霊が家路を迷わないようにという意味や、居場所の周囲を照らすという意味があります。

新盆(初盆)の白提灯は、送り火で燃やすかお寺で供養します。

【精霊馬】馬や牛に見立てたキュウリとナス

精霊馬はナスとキュウリに足に見立てた割り箸、苧殻(おがら)、爪楊枝などを刺して、馬や牛の形に作ります。

キュウリの馬はご先祖様が「早くこちらに辿り着かれますように」という想いを込めて、ナスの牛は「ご先祖様がゆっくりあの世に帰られますように」という想いを込めて精霊棚に飾ります。

お供えの種類や意味

お供えものは「五供(ごくう、ごく)」(お香、お花、灯燭、飲食、浄水)が基本となっています。

【お香】お線香

ご先祖様と共に香りを楽しみます。

【お花】仏花、故人の好きだったものなど

花瓶に生け、毎日水を換えて枯らさないように気をつけます。

【灯燭】ロウソク

焔が仏前を明るく照らす様は仏様の叡智を、ユラユラと揺れながら燃え尽きる様は人の無常を表しているという意味があります。

【飲食】オンジキ

ご飯、お菓子、果物、ジュースなど。

基本は家族と同じ食事をお供えしますが、霊供膳(りょうぐぜん:法事用の精進料理)の場合もあります。

生前同様に食事を楽しんでいただきますので、食べ物はすべてすぐに食べられる状態(お箸を添える、開封する、切り分けるなど)でお供えします。

食事は頃合いを見計らって下げ、無駄にしないように家族で分けて食べます。

【浄水】お水(水道水で良い)

心を洗うという意味があり、毎日新鮮な水をお供えします。

お茶をお供えすることもあります。


上記のほか「水の子」(みずのこ:細かく刻んだ季節野菜と砥いだ米と浄水を蓮の葉に乗せたもの)や団子などをお供えすることもあります。

まとめ

しっかりとした風習を守ってくれる親族が故郷にいる人は別として、そうではない多くの人は、お墓参りは一日で済ませて、お掃除も行ったついでにする…というのが正直なところではないかな、と思います。

特にお墓が遠方にあったり親戚とも疎遠という場合は、なおさらそうなりがちですね。

さらに、日にちの限られた休みの中で、他の予定もこなさなければならない多忙な現代人にとって、昔ながらの風習そのままにお盆を過ごすのは難しくなってきているかもしれません。


ただ、ここで一つ余談をお伝えしておくと、お墓とはご先祖様が住まう処…というわけではないようです。

ご先祖様がお墓に留まっているのではなく、あくまでその御霊はあの世の先にある極楽浄土へと向かっている…と言われています。

お墓は建てた時に「ご本尊様の霊入れ」をします。

その時点で、お墓は故人の納骨場所であると同時に、ご本尊様に繋がる仏塔(シンボル)でもあり、また、現世とあの世との境目という役割を担うものとなります。

つまり、子孫がお墓に手を合わせる時、それはすなわちご本尊様を拝むことであり、それが先祖供養の一つとなっているわけです。

もちろん、人それぞれにお墓の定義は違いますので、これが正解ということではありません。

ですが少なくとも、ご先祖様は子孫であるあなたのことを、あの世から見守っていることに違いありません。

感謝の心で手を合わせるということ自体に大きな意味があります。

その行為、その気持ちそのものが、ご先祖様への供養となっていると思います。

どうか日や風習や形式にとらわれることなく、あなたのタイミングでお墓参りに行ってください。

忙しくとも、お墓に足運び手を合わせてくれる子孫の姿を、ご先祖様も満面の笑みでご覧になっていらっしゃると思います。